大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)504号 判決

控訴人・附帯被控訴人(被告)

日本交通株式会社

代理人

森本正雄

被控訴人・附帯控訴人(原告)

浅川信一

外四名

代理人

河本尚

外一名

主文

1  控訴人の本件控訴を棄却する。

2  附帯被控訴人は附帯控訴人五名に対し、それぞれ金一八〇、〇〇〇円に対する昭和三〇年一〇月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金額を支払え。

3  附帯被控訴人は附帯控訴人浅川信一、同浅川信光、同浅川善子に対し、それぞれ金五五〇、六二四円ずつ、附帯控訴人浅川兼忠に対し金一八五、三一二円、附帯控訴人梅園勝子に対し金一、二八一、二四八円及びそれぞれ右各金額に対する昭和三八年五月九日から支払ずみまで年五分の割合による金額を支払え。

4  附帯控訴人らのその余の請求を棄却する。

5  控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用はこれを一〇分し、その九を附帯被控訴人の、その一を附帯控訴人らの負担とする。

6  この判決の主文第二、三項は、附帯控訴人浅川信一、同浅川信光、同浅川善子が、それぞれ金二一〇、〇〇〇円、附帯控訴人浅川兼忠が金九〇、〇〇〇円、附帯控訴人梅園勝子が金四五〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮りに執行することができる。

7  控訴人(附帯被控訴人)が被控訴人(附帯控訴人)浅川信一、同浅川信光、同浅川善子に対し、それぞれ金四一〇、〇〇〇円、被控訴人(附帯控訴人)浅川兼忠に対し金二二〇、〇〇〇円、被控訴人(附帯控訴人)梅園勝子に対し金七七〇、〇〇〇円の担保を供するときは、原判決及びこの判決の主文第二、三項の仮執行を免れることができる。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下控訴人という。)は、「原判決を取消す。被控訴人(附帯控訴人、以下被控訴人という。)らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、「控訴人の本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、附帯控訴として「主文第二項と同旨及び控訴人は被控訴人浅川信一、同浅川信光、同浅川善子に対し、それぞれ金六三一、八〇六円ずつ、被控訴人浅川兼忠に対し金二二五、九〇三円、被控訴人梅園勝子に対し金一、四四三、六一二円及びそれぞれ右各金額に対する昭和三八年五月九日から支払ずみまで年五分の割合による金額を支払え。附帯控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、控訴人は「本件附帯控訴を却下する。もしこれが容れられないときは本件附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、なお、担保を条件とする仮執行の免除を求めた。<以下省略>

理由

(附帯控訴の適否)

控訴人は、被控訴人らは原審において全部勝訴判決を受けたものであるから、これに対し不服を申立てる余地なく、附帯控訴は不適法であると主張するけれども、第一審で全部勝訴の判決を得た原告も、被告の控訴により事件が控訴審に係属中は、その請求を拡張することは許されるものであつて、請求の拡張は控訴審においては附帯控訴の方式によるべきものである(最高裁判所昭和三一年(オ)第九一〇号、同三二年一二月一三日第二小法廷判決民集一一巻一三号二一四三頁参照)。控訴人の右主張は失当である。

(不法行為の成否)

一昭和二八年一二月九日午後一一時一五分頃尾崎勝の運転する自動車が阪神国道の西宮市甲子園口二丁目一九〇番地先の交差点付近で浅川信明と接触し、同人が死亡するに至つたこと及び右交差点には横断歩道の設備があるのに、信明はその西方付近の横断歩道でない地点を横断したことは当事者間に争がない。

二<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

尾崎勝は控訴人にタクシー運転手として雇われていたものであつて、前示日時控訴人の事業用乗用自動車を運転し、時速四二キロメートルか四三キロメートルで阪神国道北側車道上を、先行自動車と約二〇メートルの間隔を置いて東進し、横断歩道の設備のある前示交差点のその西方付近に差しかかつたが、雨天で見通しやや困難であり、道路面も湿つて滑る危険のある状況であつた。このような場合、自動車を運転する者は、常に前方左右を注視し、進路前方を横断しようとする者があるときは、直ちに警音器を鳴らし、急停車あるいは左右のいずれかに方向を転ずる等機宜に即した万全の措置を講ずべき注意義務があるものである。ところが、尾崎は進路の右斜め前方約一五メートルの西行電車軌道上の横断歩道でない地点を北に向け横断しようとする浅川信明の姿を認め直ちに警音器を鳴らしたが、折柄同所を西進して来た自動車の前照灯の光線により目がくらみ、同人が停止したかどうかを確認できなかつたにかかわらず、同人がその場で停止して尾崎の自動車の進行を待つものと軽信し、直ちに急停車の措置を講ずることなく、また信明の挙動に注視して自動車の方向を適切に変更する方法もとらず、漫然これまでの速度で運転を継続し、数メートルに接近して初めて急停車の措置を講じたけれども、時すでに遅く車体前部左パンバーを信明に衝突させ、五メートルか六メートル先の舗装道路上にはねとばし、脳底骨折の傷害を負わせ、同人は昭和二八年一二月一〇日午後〇時四〇分死亡するに至つた。

右認定を動かすに足りる証拠はない。

三右認定事実によると、尾崎の自動車の走行速度が制限速度をこえていなかつたとしても、尾崎が前示のように他の注意義務を守らなかつた以上、右事故は尾崎の自動車運転上の過失によるものといわなければならないが、一方、被害者信明の側にも右事故発生について過失があつたものである。

すなわち、歩行者は横断歩道の設備のある場所の付近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならないものである。また、歩行者は自動車の進路の直前を横断してはならないのである。ところが前示交差点には横断歩道の設備があるのに、信明はその付近の横断歩道でない地点を横断したものである。また信明は西行電車軌道上において尾崎の自動車に先行する自動車が通過した後約二〇メートルの間隔を置いて東進する尾崎の自動車をその前照灯によつて当然気がつくべきものであり、さらに約一五メートルの距離まで接近した際尾崎の鳴らした警音器によりその接近を知つたはずであるから、当然自動車の通過を待つべききものであつて、自動車の進路の直前を横断すべきものではない。それにもかかわらず、信明は尾崎の運転する自動車の接近に注意を払わずその直前を横断したものであつて、これは信明の過失というほかなく、右過失が尾崎の過失とあいまつて本件事故をひき起したのである。したがつて、信明が右事故により被つた損害賠償額を算定するについて当然右の点を考慮しなければならない。

四前示のように控訴人はその事業のため尾崎を使用するものであつて、尾崎がその事業の執行について過失により信明に損害を加えたものであるから、控訴人は民法七一五条に基づきこれを賠償する義務があることは明らかである。

(損害賠償額)

一<証拠>によると、浅川信明は昭和六年六月一九日生れであつて、死亡当時満二二歳であつたことが認められ、<証拠>によると、満二二歳の男子の平均余命は四四・五年余であり、就労可能年数は三八年であることが認められ、<証拠>によると、信明は普通健康体の男子であつたことが認められるから、信明はなお少くとも四四年間生きることができ、三八年間就労することができたものと推認される。

二<証拠>によると、次の事実を認めることができる。

(一)  信明は尼崎市立高等学校を卒業し、昭和二六年九月日立工事株式会社に入社し、同社尼崎工場において経理事務を担当していた。

信明の死亡した時の前月における給与所得は、一カ月について基本給三、〇八〇円、第一加給二、六四七円、第二加給三、〇八〇円、地域手当三五〇円、時間外勤務手当三、三八六円、割増賃金八四七円であつた。

日立工事株式会社尼崎工場は昭和三二年二月日立機電工業株式会社に買収されたが、前者の従業員は、全部後者に引継がれ、給与退職金、停年制等の労働条件もそのままで変動はなかつた。したがつて、信明と同様日立工業株式会社尼崎工場に入社し、その後日立機電工業株式会社に勤務する者について、信明と同程度の学歴、能力を有する者の実際の給与の状況を調査することによつて信明の基本給の昇給率、賞与、退職金、時間外勤務手当等を合理的に推認することができるのであり、これを後に掲げるように極めてひかえめに算出することとしたのである。もとより勤労者の給与の状況、とくに昇給率、賞与等には個人差があり、また企業の成績によつて影響を受けるのは当然であるけれども、被害者の勤務した会社又はその後継会社において、学歴や能力について被害者と同一の程度の者が実際に受けておる給与の状況が明らかにされ、それに基づく将来の状況も合理的に推認され、しかもその数値を極めてひかえめに算出した場合、被害者の将来の収入が少くとも右限度に存在するものと推認するのが相当であつて、これをもつて控訴人の主張するように、単なる憶測であつて、確実な根拠を欠くものとすることはできない。

(1)(い)基 本 給

基本給の昇給率は日立機電工業株式会社における信明と同程度の学歴、能力を有する者についてみると、昭和二九年度七・三パーセント、昭和三〇年度七パーセント、昭和三一年度七・六パーセント、昭和三二年度九・二パーセントであつて、平均七・七七五パーセントであるから、昭和三三年度から満四四歳の昭和五〇年度までを右七・七七五パーセントで計算し、昭和五一年度から停年の満五五歳の昭和六一年度までを右割合よりも低下した五パーセントで計算すると、信明が満二三歳の昭和二九年一月から満五五歳の昭和六一年六月までに支給される基本給は、別紙収入計算表の記載とおりとなる。

(ろ)第一加給

第一加給は一カ月二五日出勤すると、基本給の八〇パーセントが支給されることになつておる。したがつて信明が満二三歳から満五五歳までに支給される第一加給は、別紙収入計算表記載のとおりである。

(は)第二加給

第二加給は成績査定によつて支給されるが、信明のような准職員の場合平均して基本給の一〇〇パーセントが支給される。職員に昇格してもその率は下らない。日立機電工業株式会社においては昭和三三年五月からさらにその率は増加したが、従前どおりの率で計算すると、信明が前同期間に支給される第二加給は、別紙収入計算表記載のとおりである。

(に)地域手当

信明が満二三歳から満五五歳までに支給される地域手当は一カ月三五〇円が変らない。

(ほ)時間外勤務手当

時間外務手当は一時間について、次の算式によつて計算される。

信明が死亡した時の前月における時間外勤務手当として支給された三、三八六円は一カ月六六時間の実働によるものであるが、一般の時間外勤務の平均時間である月二五時間に制限して計算すると、信明が満二三歳から満五五歳までに支給される時間外勤務手当は別紙収入計算表記載のとおりである。

(へ)割増賃金

割増賃金は時間外勤務手当の二五パーセントであつて、信明が前同期間に支給される割増賃金は別紙収入計算表記載のとおりである。

(と)賞   与

前示会社における信明と同程度の者に対して実際に支給された賞与は、昭和二九年六月基本給の二八四パーセント九、四〇〇円、同年一二月同二七六パーセント九、一〇〇円、昭和三〇年六月同二九四パーセント一〇、四〇〇円、同年一二月同二九八パーセント一〇、五〇〇円、昭和三一年六月同二九八パーセント一一、三〇〇円、同年一二月同四二〇パーセント一六、〇〇〇円であつて、昭和二九年六月から昭和三一年一二月までの賞与の基本給に対する比率は平均六二三パーセントとなる。そこで昭和二九年六月から昭和三一年一二月までの賞与は前示金額に従い、昭和三二年から満五五歳の昭和六一年六月までの賞与は、前示昇給する基本給に対する六二三パーセントの割合により計算し、なお従来の例に従い一〇〇円未満は四捨五入すると、信明が満二三歳から満五五歳までに支給される賞与は別紙収入計算表記載のとおりである。

なお、右金額は前示会社において信明と同程度の者に賞与として実際に支給された金額と比較してみてもはるかに少額であつて、過当でないことが明らかである。

税金は元来収入に対する公の負担であつて、得べかりし利益を算定するについて支出として控除する必要はないのであるが、被控訴人自ら給与所得、賞与についての源泉徴収税額を控除することを主張しているのでその主張に従い別紙収入計算表記載の金額を控除することとする。

信明の満二三歳から満五五歳までの各年度ごとにおける(い)(ろ)(は)(に)(ほ)(へ)(と)の支給給与額から前示税金額を控除した金額について、計算の便宜上被控訴人の主張する昭和二九年一月一日を基準とする現価をホフマン式計算法により年五分の中間利息を差引いて算出し、前示期間のものを合計すると七、五〇五、六〇八円となる。

(2) 退 職 金

前示会社における従業員退職規程によると、退職金は身分により支給率を異にするが、信明は昭和二六年九月から昭和二七年一一月まで一年三カ月雇員であつて、その支給率は八一パーセントであり、信明は昭和二七年一二月准職員となつたのであるが、一般の例に従い准職員の在職期間四年で昭和三一年一二月職員となるものとすると、准職員の間の支給率は一五二パーセントであり、昭和三一年一二月から信明の停年の昭和六一年六月まで二九年六カ月の支給率は、一一、六八六パーセントであり、右在職期間合計三四年九カ月の支給率合計は一一、九一九パーセントとなる。停年による退職金は停年退職時の基本給に右支給率を乗じたものに、さらに一〇パーセント加算される。ところが、信明の停年退職時の基本給は、前示のとおり二七、三四二円と計算されるから、信明の停年による退職金は次のとおり三、五八四、七八二円となる。

27.342円×119.19×1.1=3.584.782円

右三、五八四、七八二円から被控訴人の主張する税金三七七、三三七円を控訴すると、三、二〇七、四四五円となるが、計算の便宜上被控訴人の主張する昭和二九年一月一日を基準とする現価をホフマン式計算法により年五分の中間利息を差引いて算出すると、一、二一〇、三五七円となる。

(3) 停年退職後の収入

信明は満五五歳の停年退職後、前示のように満六〇歳まで就労可能であり、その収入は信明の満五五歳当時の収入(税金を控除したもの)の半額一カ年四六六、一七四円を下らないが、信明の満五五歳から満六〇歳までの一カ年四六六、一七四円の収入について各年度ごとに前同様昭和二九年一月一日を基準とする現価をホフマン式計算により年五分の中間利息を差引いて算出すると、別紙収入計算表記載のとおりであり、これを合計すると八四〇、一六八円となる。

以上(1)(2)(3)合計九、五五六、一三三円となる。

右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(4) 生 活 費

成立に争のない甲第一二号証の日本銀行統計局発行和年三七年報本邦経済統計によると、勤労者世帯収入支出調において、収入総額に対する実支出額の比率は、昭和二八年度から昭和三七年度まで被控訴人主張のとおりであつて、これを平均すると六一・一パーセントとなることが認められる。しかしながら、右甲第一二号証をさらに詳細に検討すると、この実支出額は平均四人余の世帯員全員の食料費、住居費、光熱費、被服費、雑費、租税等を合算したものであつて、世帯主一人の生活費ではなく、一面この収入総額は世帯主収入が主要なものではあるが、それ以外の者の収入を含むものであることが認められるから、右比率をもつて信明の収入に対する生活費の比率を表わすものとすることは適当ではない。

しかしながら、損害額を算定するについて、被害者本人の生活費は収入を得るために必要な支出と認められるから、収入からこれを控除しなければならないが、扶養家旅の生活費の支出と被害者本人の収入の間には直接の関係はないから、扶養家族の生活費は収入からこれを控除することを要するものではない。

ところで、右甲第一二号証によると、勤労者世帯収入支出調において、世帯主のみの収入に対する、実支出額を世帯員数で除したものの比率は、昭和二八年度から昭和三七年度までのいずれのものも、被控訴人主張の収入総額に対する実支出額の比率最高六五パーセント、最低五八パーセントよりも、はるかに少いものであつて、被控訴人主張の生活費は実際よりも著しく多く見積られたものである。したがつて信明一人の生活費については、信明が世帯主となるものであつて、世帯主の生活費は他の世帯員のそれよりも多く、また信明が結婚し子供をもつことによつてその生活費が増加するものとしても、とうてい被控訴人主張の生活費の額を超過するものではないのである。

そこで被控訴人の主張に従つて昭和二九年度満二三歳から昭和六六年度満六〇歳までの信明の生活費を計算すると、別紙生活費計算表記載のとおり合計五、〇九一、一九八円となる。

右(1)(2)(3)の得べかりし収入合計九、五五六、一三三円から右生活費合計五、〇九一、一九八円を控除した四、四六四、九三五円は、本件事故により失つた得べかりし利益の総額についてホフマン式計算法により年五分の中間利息を差引いて算出した現価にあたるのである。

ところが本件事故の発生については被害者信明にも前示のような過失があるものであるから、控訴人の支払うべき損害賠償額はその一〇パーセントを軽減するのを相当と認める。したがつて控訴人は四、〇一八、四四一円を賠償すべき義務があるものといわなければならない。

被控訴人浅川兼忠は信明と母を異にする兄であり、その他の被控訴人四名及び浅川保は信明と父母の双方を同じくする兄弟姉妹であることは当事者間に争がないから、被控訴人浅川兼忠は右四、〇一八、四四一円の損害賠償債権の一一分の一にあたる三六五、三一二円、その他の被控訴人四名及び浅川保はそれぞれその一一分の二にあたる七三〇、六二四円を相続により承継したものといわなければならない。

控訴人は、信明が生存していたならば二六歳か二七歳で配偶者を得るであろうし、二七歳か二八歳で直系卑属を得るであろうから、被控訴人らの信明の兄弟姉妹としての相続分に変更を来すであろう。したがつて被控訴人らが信明の損害賠償債権を相続によつて取得することができる範囲は相続権を有する範囲に限定されなければならないと主張するけれども、被控訴人らは信明の死亡により信明が死亡当時有していた権利義務を確定的に承継したものであつて、信明が結婚したり子供をもつたりすることは、信明が生存していた場合の想定に過ぎず、信明が死亡した以上、その妻子が相続分を取得する機会は永久に去つたものであり、被控訴人らが相続分に応じて取得したものに影響を及ぼすべきものではない。控訴人の右主張は理由がない。

<証拠>によると、浅川保は昭和三一年七月二日控訴人に対する右損害賠償債権を被控訴人梅園勝子に譲渡し、同月四日その旨を控訴人に通知したことが認められる。

そうすると、控訴人は被控訴人浅川信一、同浅川信光、同浅川善子に対し、それぞれ七三〇、六二四円、被控訴人浅川兼忠に対し三六五、三一二円、被控訴人梅園勝子に対し一、四六一、二四八円を支払うべき義務があるものであるが、原審において九〇〇、〇〇〇円を認容されているので、被控訴人らの本訴請求は、控訴人が被控訴人五名に対し、それぞれその五分の一である一八〇、〇〇〇円に対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和三〇年一〇月一六日から支払ずみまで年五分の割合による損害金を支払うべきことを求め、また前示各金額から一八〇、〇〇〇円を控除したうえ、被控訴人浅川信一、同浅川信光、同浅川善子に対し、それぞれ五五〇、六二四円被控訴人浅川兼忠に対し一八五、三一二円、被控訴人梅園勝子に対し一、二八一、二四八円及びそれぞれ右各金額に対する本件附帯控訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和三八年五月九日から支払ずみまで年五分の割合による損害金を支払うべきことを求める限度で正当としてこれを認容すべく、その余の部分は失当としてこれを棄却しなければならない。そこで控訴人の本件控訴を棄却するとともに附帯控訴を一部容れることとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条一項本文、仮執行の宣言及びその免除について同法一九六条を適用し、主文のとおり判決する。(熊野啓五郎 岩本正彦 朝田孝)

別紙 収入計算書・生活費計算表<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例